2022年4月22日金曜日

世界の端と端を結ぶ橋。

 橋は、見るのも、渡るのも、潜るのも、好きです。

なぜか、橋に魅かれてしまいます。

大きな川に架けられた橋には、ふたつの土地を結ぶ力強さを感じますし

小さな川に架けられた橋には、歩く人を励ますような優しさを感じます。


橋の語源は、「端(はし)」だそうです。

「端」には「間(あいだ)」の意味もあり

両岸の間にわたすもの、離れた端と端を結ぶものの意味から

「橋」という言葉が成立しているようです。

 ※語源由来辞典


大学生の頃、エジプトを旅しました。

夜、ナイル川のほとりに佇み、遠い対岸を見つめました。

古代エジプト時代には、ナイル西岸は死者の町とも呼ばれ、

多くの墓が造られたと、日中の観光の際に耳にした、その夜のことです。


ナイルの西岸は、夜になると真っ暗な闇に包まれ、小さな光がポツポツと見えました。

数千年前、エジプトに暮らした人たちは、この川の向こうの世界を、死者の町を

どんな思いで見つめていたのだろうと

当時の人たちの眼差しに自分の眼差しを重ねる思いで、対岸を見つめ続けました。


橋というものがなければ、その川が大きければ大きいほど

その両岸に暮らす人たちは、対岸を、ある種の畏怖や羨望を持って眺めるしか

ないのではないでしょうか。

今、橋は、どこにでもあり、私たちは、ここではない、あちら側へ

最も簡単に移動することができます。

それは、もしかしたら、ここではない、違う価値を持った別の場所への

想像力や尊重の思いを薄めてしまってはいないだろうか、とも思います。


文明の進歩に従って、世界は「橋」に満ちて行きましたが

「端」という感覚は希薄になっているのではないでしょうか。

端に立つ時の、もうひとつの端に対する、畏怖と謙虚と想像力は

果たして健全に受け継がれているでしょうか。








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