2022年4月21日木曜日

嘴広鸛は、ハシビロコウと読みます。

 それまで全く知らなかったのに

それを知った途端に魅入られてしまって

ずっと好きなまま、ということがあります。


なんでこういうことが起きるのか、考えてみたのですが

おそらく、もともと自分の心の奥深くに、秘めたる価値観があって

その価値観を満たす何かにはまだ出会っていないために

自分がそのような価値観・好みを持っていることに自覚がないまま過ごしていて


ある時、その価値観にぴったりハマる何かに出会い

「うわ、これすごい。こういうの、大好き」と電気が走り

以来、自分がこれまで秘めてきた無自覚な価値観が

心の中心近くに自覚されて根を張る、ような現象が起きているのではないでしょうか。


例えば、僕にとってのハシビロコウとの出会いがそうでした。

動物好きの家族が、ハシビロコウという鳥がいて、とても面白いと教えてくれて

調べてみたら、「なんだこれ?」という怪鳥でした。

不釣り合いに大きな嘴、鋭い眼光、広げるとびっくりするくらい広い翼

長い足と爪、それに何より、ほとんど動かず、じっとしているのです。


アフリカに生息する絶滅危惧種らしいのですが

なんでじっとしているかというと、極たまにある、餌となる肺魚という魚が

呼吸をするために水面に上がってくる瞬間を逃さないために

じっとしているそうです。


鋭いめで、じーっと水面を見つめ続け

肺魚が浮上してきた瞬間を逃さずに、ものすごいスピードで捉えます。

静から動への急展開ぶりが、すさまじいです。


僕はこのハシビロコウの姿に魅せられてしまいました。

1日の間に、何度あるかわからない、おそらく数えるほどしかない

ほんの一瞬のために、じっと静止し続ける、感覚を研ぎ澄ませたまま。

やってきた一瞬にすべてを集中して、逃さない。

そしてまた静かに佇み続ける。


自分にとって一番大切な何かを深く自覚し

そのために、全神経を集中しているように見えます。

ハシビロコウは孤独を好み、単独行動が多いそうです。

そういうところにも、生きる姿勢の潔さのようなものを感じます。


こんなハシビロコウが絶滅の危機に陥っているのは

集団で文明を築き、環境を破壊してきた人間の営みが原因です。

人間は集団を作り、未来像を共有し、分業し、伝承できたからこそ

ここまで栄えたのでしょうけれど

個々の人間は、ハシビロコウの境地には、至っていないように思えます。




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