2022年3月3日木曜日

相手と出会うということは。

以前、蕎麦屋さんと話した時のこと。
今でも印象に残っている言葉があります。

蕎麦屋さんの仕事ぶりについて、伺っていたのですが
前日のうちに始まる仕込みから始まって、翌日の蕎麦打ちをへて
夜の片付け、そしてまた仕込みまで
同じことを、毎日繰り返しているように、僕には聞こえました。

それで「毎日同じで、飽きないですか?」と尋ねました。
その蕎麦屋さんの答えが、今も心の奥に残っています。
「同じということはないです。蕎麦粉は毎日ちがいますから」

細かい言葉の表現は忘れましたたが
彼の言葉から僕が受け取った意味は

「毎日向き合う蕎麦粉の状態も、その日の天気も、少しずつ違うから
その日にすべき仕事、その進め方も、少しずつ違う
同じことをしているように見えて、同じ日は一日もない」

というものでした。

蕎麦粉という生き物を扱う仕事のあり方とは
このようなものかと感心し
自分の物事の捉え方が、あまりに機械的で単純だったことを恥じました。

そういえば、包丁を作る刃物職人さんも
よく似たことを言っていたような記憶が、今、蘇りました。
同じ包丁をいくつも作っているように見えて
素材の状態は、ひとつひとつ違うから
その作り方もまた、少しずつ違う、と。

相手が生き物であれ、鉄であれ
同じものに出会うことは、ほとんどなくて
同じに見えて、少しずつ、時に大きく違う対象であることを
理解することが、ちゃんと出会う、関わるということなのだなと思いました。



 

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