書店に行けば、普通は本を物色したり
お目当ての本があれば、その棚に向けてまっしぐらだったり。
コンビニに行けば、缶コーヒーを買い、立ち読みはあまり許されないので
そそくさと店を出たり。
職場に行けば、仕事を次々とこなし、より短時間でより高い成果を出せば
高い評価を受けて、良い待遇を得られたり。
学校へ行けば、授業を受けて、テストのために勉強をし
成績を返されるたびにヒリヒリとした思いをし
そこから束の間逃げ出そうとしてゲームに没頭すれば
ついついのめり込んで、親に怒られたり。
世の中、とかく忙しいというか、すべきことが詰まっているというか
あっちにいっても、こっちにいっても、そこですべきことが決まっていて
いや、時には、何にも決まっていないこともあるのですが
今時は、ネット情報が豊富で、どこどこへ行ったら、なになにをした方が良いとか
余計なアドバイスが山のようにあります。
ボーッとテレビやネットを見ているだけでも、すべきことが押し寄せてきます。
CMであれ、ドラマであれ、スタイリッシュだったり、可愛かったり
頑張り屋だったりする登場人物が、魅力的な日常を生きてみせます。
そこに込められた暗黙の、時に明示的な、メッセージは
あなたの生活は、まだ不十分ですよ。こんな生活してみたいでしょ。
だったら、これを選びなさい。これをしなさい。
という、視聴者の生活の欠落を指摘し、その充足を商品やサービスによって
埋めるように誘うものです。
世の中が忙しないのは、押し寄せる情報のせいでもあり
都市化が進んで、目的に向けて効率的にそれを達成する機能的な場所が
街に溢れてしまったせいでもあるように思えます。
何もしなくてもいい、ただそこにいることが許される場所。
一見、無駄で、非効率で、何のためにあるのか、よくわからない場所。
濃密な町の中に、そんな余白や余剰のような場所があることで
何もしない、ただただ、そこにいるだけ、という時間が持てるのではないかと思います。
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