2022年6月10日金曜日

ライバルの効用。

 陸上の日本選手権、男子100m決勝を観ていました。

予想通り、サニブラウン選手が優勝でしたが、思ったより僅差でした。

隣の選手が想定よりも前にいたので、少し力が入り過ぎたのでしょうか

好条件の割には記録が伸びていないように思いました。


自分が極めようとする分野で、それを同じように志す仲間、ライバルがいることは

自分ひとりでは引き出せない力を、思いがけず引き出してくれる効用があるようです。

ひとりで黙々とがんばって練習しても、どうしても突破できなかった壁が

仲間と練習することや、試合でライバルに勝つことを目指すことで

ついに突破できる、というエピソードを聞くことがよくあります。


しかし一方で、ライバルに先行されると、必要以上に力が入ってしまい

自分本来のパフォーマンスを発揮することが出来なくなることもあります。

ひとりでなら伸びやかに走れるのに、ライバルと競り合うことで

走りがぎこちなくなって遅くなってしまうこともまた、よくある話です。


ライバルと良い影響を与え合う条件とは、どのようなものなのでしょう。


ひとつ、すぐに思いつくことは、負けることを恐れると

過剰に力が入ってしまい、本来のパフォーマスを失うということです。

ライバルが先行した場面で自分を見失うのは、「負け」の可能性が意識を乱すからでしょう。

すると、勝ち負けを意識するのではなく、

別の何かを意識した方が良いということかもしれません。それはなんでしょう。


それはおそらく、最高のパフォーマンス、境地に達すること、ではないかと考えます。

100mを43歩で走るとして(サニブラウン選手はそのくらいだそうです)

最高の43歩をいかに実現するか、そのための準備の時間をいかに充実させるか

そこに意識を集中して、やれることをすべてやる、それで出た結果は素直に受け入れる。

そのような姿勢を保とうと試みる時にこそ

ライバルと良い影響を与え合えるのではないでしょうか。

ライバルがいてくれることが、最高の境地への感覚をより鋭敏にしてくれる

まだ先があるはずだ、さらなる高みがあるはずだと、思わせてくれることにつながる。


100m決勝より前に行われた1500m決勝で

後ろから抜かれた瞬間、抜き去る相手を横目で見てしまった選手が

そのままズルズルと後退していくのを目にしました。

その時、その選手の脳裏には敗北への恐れが、よぎってしまったのではないかと

素晴らしい真剣勝負を観戦しながら、思いました。





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